雪の夜、彗星探しの日記(弐)

雪夜彗星のブログ。内容も更新頻度もまちまちです。「弐」なのははてなダイアリーから移行したので。

2018記録飛行撮影とフィルムの話

 本記事は以下の企画の参加記事です。

人力飛行機・鳥人間コンテスト Advent Calendar 2022 - Adventar


 というか、このブログ、1年以上更新してなかったんですね。まあてんてこ舞いな1年を過ごしていたので書きくさして中途半端なところで停まった下書きが沢山ありました。いつか日の目を見るのでしょうか……。 

 私らしい話ということで記録飛行の撮影に関するお話です。
 ──え! 資料提供したドラマの話期待した!? メイキングの話を公にするのはここでもないし多分俺でもない。どこまで公にできる話題かどうかもわからんしそれは実際に会ってきいてくれ!

 2018年の大阪府立大学 堺・風車の会の記録飛行の撮影時の書くことにします。まずは以下の動画をご覧頂ければ。噂の飛行機朝ドラ『舞いあがれ!』でも同じようなシーンがありましたね。

 機体にかぎらず人の動きもここまで映っており、公開している記録飛行も珍しいと思うので撮影隊取り仕切りとして色々思い出しながら書いていきます。特にフィルムについては危惧している事もありますので後半に徒然と思っている事を。

■機材構成

 今回、フライト予定日が複数日あったので日によって出てきた機材は異なるのですが、記録に残っている機材だとで以下の通り。

デジタルカメラ

 Canon EOS 5D mark III / 50D / Panasonic LUMIX GH5s / GH2 / OLYMPUS E-M1 / PENTAX K-70 / NIKON D5500 / P900 / FUJIFILM X-T2 /他

フィルムカメラ

 MINOLTA α-Sweet / α7000 / 他一台(多分EOS系だったかと)

・ドローン

 DJI Phantom 4 Pro / DJI Mavic Air

 動画についてはビデオカメラの類は1台もなくGH5sなど動画スチルカメラで撮影していました。

 

■機材配置

 基本的には彦根港だけに配置し、ボートには写真用のデジタル1台、フィルム2台だったかと思います。ボランティアで組織した事もあって水がかかるなどによって故障など起きても補償がどこまでできるか難しいところだったので最小限にしました。

 2機のドローンは機体後方と斜め前方向で待機し、両者高度違えて飛行するようにしていました。
 ドローンもボートからの離艦を考えたのですが、難易度が高い事、それにドローンの離着艦のためにボートを停めたり動かさないといけない事もありこちらも彦根港から制御できる範囲で飛ばす事にしました。

 

■フィルム機材の手配

 今回の記事でいちばん書きたかった話がこちら。FAIの記録飛行挑戦時にマストとなるフィルム撮影について。
 ご存じの方もいるかと思いますが、記録飛行宣言板やライセンスを持ったパイロットと公式立会人、離陸や2mの高度通過、スタートやゴール、着陸(着水)の様子を「フィルムカメラ」で撮影する必要があります。
 かつては「デジタルかフィルムか」なんて議論があったこの業界もデジタル一辺倒でフィルムはごく一部の領域としてほそぼそとかろうじて生き長らえている状態で、なかなか実務で用意しようとすると難儀なものです。

 この記録飛行の際には1台は私が持っていたフィルム一眼レフ、MINOLTA α7000に加えて、家の近くで見つけたα-sweetを買い足しました。マニュアル露出のフィルム機は複数台持っているのですが、流石に露出ミスが許されず、他の人に託すとなるとこの手のカメラは心配なので……。ちなみにレンズも含めて手配して5,000円しなかったと思います。α系の中古は割と安い値段で出ている印象ですね。

 それに中に装填するフィルムも入れないといけません。3台用意したカメラのうち、ISO400とISO800を入れていた覚えがあります。台数は忘れてしまいましたが……。
 2018年当時はまだ富士フィルムがまだいくつかの種類のフィルムがあり、感度も選べたのですが、今となってはこの状態。2018年当時はまだISO800のフィルムもフジから売っていたのですけれども、無くなってしまいました。今は下記に紹介するKodakのものが主流であとは趣味性の高いものぐらいです。
 あと現像も昔だとスピードプリントといって1日もあれば現像してくれる写真屋さんはいくつもありましたが今となってはラボに送るので数日かかるのは当たり前、みたいな感じとなってしまいました。

 フィルムを取り巻く環境は趣味の分野としてみても年々厳しくなっているので、ときとともに手配は難しくなると思っています。

■フィルムに対する個人的な意見

 私はフィルムだからといってそこに真実性が宿るわけではないと思っています。スターウォーズインターステラーもポスプロでエフェクトがかかっているとはいえ、撮影はフィルムでやっていますから……。

 それに今時、スタジオでは高精細LEDパネルや大きなスクリーンに映像を投影して背景として利用する事も増えています。そういうところに映し出されたものをフィルムで撮る事も現実的に可能です。ドラマ『舞いあがれ!』でもばんばの軒先から見える五島の景色はLEDパネルで出しているそうですよ。

 写真としての信憑性ならむしろRAWで撮影したデータや詳細に撮影情報が残るExifのほうがまだ信用に足るのでははないかとさえ思っています。最近はGPS内蔵で位置情報をカメラに残せるものもありますし。
 公式立会人による時計等確認もあるので、そこで記録撮影に利用するカメラの時計設定とGPSログの確認をして、みたいなのが良いのかなと思っています。

 プロを雇えば良いですが、学生のクラブや好きで集まっている人たちが大半である人力飛行機チームにおいてそう簡単にプロに頼むのも(だから雪夜彗星に頼
 学生だと大学にある写真部に相談するのも手かもしれません。フィルムを使っている人がどの程度いるのかは部によるので本当に声を掛ける場合は確認しましょう。

 

■そんな事はいっても今はフィルムで撮らないといけない

 ここで話が終わっては無責任なので新品で比較的入手しやすいカメラやフィルムを紹介しておきます。ただこれも2022年12月でのお話なのでいつどうなるかはわかりません。

・カメラ:Kodak EKTAR H35

www.kodak.com

 

 名門フィルムメーカーのコダック社が2022年に発売した最近出したコンパクトフィルムカメラです。日本語の公式サイトが見つからなかったので海外のURLを引っ張ってきました。ハーフカメラというもので通常のフィルムの一コマを縦2つに割る事で指定のフィルム枚数の2倍撮れるようになります。36枚フィルムを入れると72枚撮れます。その分画質は落ちますが、よほど大きく印刷しない限りは問題ないでしょう。

 写りについてはまあ甘く、絞りもF9.5、シャッタースピード1/100で固定というトイカメラ感も否めないですが、公式立会人の方いわく、小さくてもとりあえず映っていれば良い」という事なので、目を瞑って飛んでいる飛行機の方にレンズを向けて撮っておきましょう。レンズは22mmとありますが、ハーフフレームなので35mmフルフレーム換算だと44mm相当でしょう。個人的に好みの画角ですが、専用テレコンなんてあると良いですけどね。

 おすすめしておいてなんですが、私はハーフカメラ、FUJICA Halfというものしか持っておらず、映りについては知人の方に紹介頂いたこちらのツイートなどが参考になるかと思います。
 それに新たに発売されたハーフカメラということで話題担ったこともあり「Kodak H35」と検索するといろんな方の記事が出て来ますので、気になった方は調べてみてください。

 あと新品のフィルムとなるとかすかな希望の光はリコーペンタックスが新しいフィルムカメラを作る、というリリースがつい先日出たことでしょうか。ただ、記録飛行撮影に向いているカメラなのか、金額も手が届きやすいのか、使いやすいのか(オート露出で撮れるのか)などは不明です。

news.ricoh-imaging.co.jp

 ただ上記のH35がだめならやっぱりオートで撮れる中古のフィルムカメラを探してくるのは無難なんだろうなと思います。

・フィルム:ISO400編「フジカラー SUPERIA PREMIUM 400」

www.fujifilm.com

 2022年12月現在での入手性、現像の対応店の多さ、感度のバランスを考えるとこのフィルムが「記録飛行に限って言えば」扱いやすいのではないかと思います。ISO400という感度も通常の撮影では高めと思われそうですが上記のH35カメラと組み合わせるとなるとF9.5という暗さや暗いうちから撮らないといけない事を踏まえると最低でもこの値はほしいところです。

・フィルム:ISO800編「Kodak PORTRA 800」

news.mapcamera.com

 こちらのフィルム、Kodakの公式サイトが見つからなかったので検索してトップに出てきたマップカメラのサイトを紹介しておきます。
 もう夜間撮影専門みたいな感度ですが、それでもF9.5、1/100のカメラで使うとなるとこちらのフィルムも選択肢に入ってくると思います。
 フジのものに比べると暗いところがよく映る分、ノイズが多くなりますが、記録飛行はとりあえず写っていれば大丈夫なので……。あとはKodakは現像に時間がかかるお店が多いのも注意しておいたほうがいいところですね。

 

 とまあ、徒然と記録飛行撮影について2018年の事を思い出しながら書きたいことを書き出しました。何かもっと詳しい話を知りたい方がいれば私のTwitterの方からお気軽にご連絡下さいね。

 

 ただでさえ申請やライセンスが大変な記録飛行挑戦、記録のカメラの事で話を進められない、なんて事が起きないようになるのが一番良いと願っています。

 いずれは「フィルムによる記録をいつまで信じるのか」みたいな話をスカイスポーツシンポジウムでしたいなとも考えていますが、果たして叶うのやら。

 

 追伸:例のドラマの記録飛行シーン、公式立会人に挟まれている舞ちゃんの絵がないか期待したんですが、なかったですね。